レビュー – BenQ「GW2760HS」
BenQから販売されている新A-MVA搭載の「GW2760HS」のレビューです。
技術的なことがメインな裏レビューも同時に別館にて投稿しています。
更新:2013年09月10日(火)
概要
BenQ社が販売しているGW2760HSの特徴として、広視野角の新VAパネルによる“カラーウォッシュアウト”の低減、フリッカフリー(画面のちらつき防止)、スリムベゼルの採用などがあります。
デザイン
BenQの標準的なデザインです。 光沢のあるピアノ仕上げです。
この処理がされている部分は指紋と傷が付きやすいです。実際、レビューするために何度が持ったりしていたので指紋だらけになり、ベゼル幅を測定するために定規を当てたら傷が付きました。
スリムベゼル
このモニターの特徴にスリムベゼル(画面部分の枠が狭い)があります。IPS方式の液晶パネルでもスリムベゼルの機種が出ていますが、非表示エリア有り(ベゼルが細い変わりに画面部分に黒い部分がある)なのが大半ですが、これは非表示エリア無しです。
BenQの製品ページでは、“11.5mm”という寸法になっていますが、これは一番細い部分での数値です。 上、左右の細い部分では約11.5mmで、下ベゼルが17mmです。下ベゼルは電源ランプが突起になっている部分があり、この部分では約20mmです。
OSD
OSD設定はモニター裏にあるボタンで選択します。
OSD設定
OSD設定は電源ボタン以外を押すと表示されます。
初期表示される5つ設定のうち3つはユーザーが任意設定することができます。2つは全設定の項目とキャンセルの項目で固定されています。
設定項目は基本的なものは全て揃っています。 輝度、コントラスト、シャープネス、ガンマ、色温度、AMA(オーバードライブ)など。
画像モード
標準、動画、ゲーム、写真、sRGB、観覧、エコ、ユーザーが選択できます。
液晶パネル
液晶パネルには、台湾のディスプレイメーカーであるAU Optronics(以下“AUO”)社が製造したA-MVAパネルが採用されています。
表面処理
ノングレア処理ですが、ハーフグレアに近いです。結構反射があります。 処理自体は、そこそこ綺麗です。PLSパネルほどではないですが。
画質初期設定
画像モード:標準
輝度:100
コントラスト:50
シャープネス:5
ガンマ:3
色温度:標準
色相:50(画像モード“標準”では設定できない)
彩度:50(画像モード“標準”では設定できない)
AMA:高
輝度
輝度設定100ではかなり明るく、0にしてもあまり輝度を下げることができません。
輝度設定値/ コントラスト設定値 |
100 | 75 | 50 | 25 | 0 |
---|---|---|---|---|---|
50 | 342cd/m2 | 286cd/m2 | 227cd/m2 | 162cd/m2 | 93cd/m2 |
40 | 275cd/m2 | 229cd/m2 | 181cd/m2 | 130cd/m2 | 74cd/m2 |
30 | 216cd/m2 | 180cd/m2 | 143cd/m2 | 102cd/m2 | 59cd/m2 |
20 | 168cd/m2 | 140cd/m2 | 111cd/m2 | 79cd/m2 | 45cd/m2 |
10 | 128cd/m2 | 107cd/m2 | 84cd/m2 | 60cd/m2 | 35cd/m2 |
0 | 95cd/m2 | 79cd/m2 | 62cd/m2 | 44cd/m2 | 26cd/m2 |
輝度だけでなく、コントラストの設定を下げると当然ながら輝度を下げることはできますが、コントラスト比が下がります。
sRGBの設定があるのですが、コントラスト50の状態では、sRGB規格の推奨輝度である80cd/m2に輝度設定のみでは実現することができません。
VAパネルのためコントラスト比が高いため、コントラストの設定を下げても高いコントラスト比を維持(後述)できますが、発色が悪くなります。
コントラスト比
輝度設定値/ コントラスト設定値 |
100 | 75 | 50 | 25 | 0 |
---|---|---|---|---|---|
50 | 3699:1 | 3694:1 | 3693:1 | 3696:1 | 3683:1 |
40 | 2968:1 | 2966:1 | 2961:1 | 2965:1 | 2936:1 |
30 | 2344:1 | 2343:1 | 2337:1 | 2337:1 | 2325:1 |
20 | 1822:1 | 1818:1 | 1817:1 | 1815:1 | 1803:1 |
10 | 1381:1 | 1379:1 | 1381:1 | 1377:1 | 1369:1 |
0 | 1020:1 | 1018:1 | 1021:1 | 1017:1 | 1011:1 |
輝度を下げてもコントラスト比は変わりません(数値が違うのは誤差)。コントラスト設定を下げれば、コントラスト比は下がります。
一応、カタログスペックではコントラスト比は3,000:1ですが、コントラスト設定50では、それをオーバーしています。低いのではなく高いので、問題なしです。
この高コントラスト比はさすがのVAパネルです。(液晶パネルでは)高コントラスト比であり、黒表示時の“黒”は、IPS方式では味わうことができないです。
ガンマ曲線
ガンマ設定を1~5の数値で設定でき、デフォルトでは3が設定されてます。
説明書の説明では『Windowsの標準値』となっているので、標準値であるガンマ約2.2(正確にはsRGBのガンマ値)を目標値に測定すると、ガンマ補正曲線が上に持ち上がります。
この画像は、ガンマ2.2で測定したガンマ“補正”曲線です。このように“上”に曲線を描いて補正されているということは、2.2ではなくこれより高い数値が設定されているわけです。そのため、ガンマ値を測定すると高い数値に設定されていました。
ガンマ設定“3”では以下のようになります。
輝度設定値/ コントラスト設定値 |
100 | 75 | 50 | 25 | 0 |
---|---|---|---|---|---|
50 | 2.52 | 2.51 | 2.51 | 2.51 | 2.51 |
40 | 2.47 | 2.47 | 2.47 | 2.47 | 2.47 |
30 | 2.44 | 2.44 | 2.44 | 2.44 | 2.44 |
20 | 2.41 | 2.41 | 2.41 | 2.41 | 2.41 |
10 | 2.39 | 2.38 | 2.38 | 2.38 | 2.38 |
0 | 2.36 | 2.36 | 2.35 | 2.35 | 2.35 |
コントラスト設定を変更するとガンマ値が下がりますが、0でも2.2にはなりません。
ガンマ自体はRGB各線がほとんど同じで綺麗です。ガンマ値2.5で測定すると、比較的綺麗なガンマ曲線になります。
色温度
デフォルトの色温度は“標準”に設定されています。
輝度設定値/ コントラスト設定値 |
100 | 75 | 50 | 25 | 0 |
---|---|---|---|---|---|
50 | 7103K | 7072K | 7015K | 6966K | 6915K |
40 | 6957K | 6939K | 6891K | 6839K | 6785K |
30 | 6933K | 6893K | 6850K | 6804K | 6754K |
20 | 6920K | 6899K | 6850K | 6806K | 6749K |
10 | 6925K | 6900K | 6854K | 6807K | 6750K |
0 | 6926K | 6918K | 6866K | 6822K | 6757K |
6500Kではなく、少し寒色に設定されています。
各画像モードでは以下のようになります。
画像モード | 標準 | 動画 | ゲーム | 写真 | sRGB | 観覧 | ユーザー |
---|---|---|---|---|---|---|---|
色温度 | 7103K | 6717K | 8088K | 10408K | 7154K | 測定不能 | 7008K |
各設定はデフォルトの設定です。
標準とユーザーは同じ設定であるため、測定値に差がありますが、誤差の範囲です。
なぜか、「sRGB」より「動画」の方がsRGBに近い色温度を計測します。そのため、動画の方が“個人的には”落ち着いた設定に見えます。
観覧モードは、かなり“青色”が抜けた色設定になります。色温度は測定不能で、白色点の座標はx0.369,y0.404です。色温度といっても正確に相関色温度です。相関色温度は黒体軌跡から偏差0.02までと決まっているため、これをオーバーすると相関色温度にはならず、その“色”は色温度を持たないということになります。詳しくは当ブログ記事の「色温度」をご覧下さい。
色域
GW2760HSの液晶パネルは、AUO社が製造しています。ここでは技術的に詳しく述べませんが、おそらく、同社のA-MVAの最新型であるA-MVA3技術が使われていると思われます(個人的には99.9%そう思ってます)。
モニターのデータでも、AUOのパネル“AUOM270HVN020”が使われていることが分かります。
色域ですが、正直言って普通です。広くもなく、狭くもなく。
▲CIE1931色度図。灰色部分がsRGBの色空間。少し色が付いてのが、GW2760HSの色域。
測定結果を見ると、従来のパネルと差ほど差はありません。仕様上ではNTSC72%で、測定値でも約72%のカバー率です。sRGBカバー率は約93%です。
測定結果そのままですが、妙に黄色が伸びて、水色が出てないという感じです。
青と緑の間の色(いわゆる“エメラルドブルー”)を表示すると、淡白な色(ようするに色が薄い)に感じられます。
黄緑色は出過ぎなぐらいなので、この部分はもったいないですね。
視野角
旧A-MVAパネルから一番大きく改善されたのが、視野角だと思います。旧A-MVAはお世辞にも広い視野角は持っていませんでした。仕様上では“178度”となっていますが、実際は頭を傾けるだけで色が抜けて白っぽくなり(これがAUO(BenQ)のいう“カラーウォッシュアウト”)、実質上の視野角は狭かったです。
GW2760HSの搭載された新A-MVAは、この色抜けを大きく改善しています。
基本方位角である、上下、左右だけでなく、この間の斜めの方位角でも色が“顕著”に抜けるということはありません。
上画像は結構角度を付けて撮影していますが、色抜けが少ないことが分かります。色変化は少ないですが、コントラスト比の低下は目に見えて分かります。
これだけの広視野角ですが、IPS方式のパネルに比べるとどうしても粗が出ます。これは液晶表示方式の違いから致し方ない部分です。
それでも、旧A-MVAに比べると段違いの視野角を有しています。旧パネルのような“TNパネルよりはマシ”ということはまったくありません。ただ、テレビ用のA-MVA3パネルと同レベルにはなっていません。個人的にはUV2Aより広いとは思いますが。
ユニフォミティ(表示ムラ)
エッジ型のLEDを搭載しているため、輝度ムラが発生しやすく、容易に観察することができます。
306cd/m2 6883K |
331cd/m2 6965K |
299cd/m2 6997K |
313cd/m2 7133K |
350cd/m2 7116K |
316cd/m2 7151K |
321cd/m2 7281K |
325cd/m2 7281K |
326cd/m2 7443K |
画面を9分割した際の輝度値と色温度。デフォルト時の測定値です。
画面下から上に向かって色温度が低下しています。これは、擬似白色LEDが画面の下側に設置されているためで、LEDに近い部分で青色波長が鋭くなっているためだと思われます。
この製品帯で、サイズが大きい液晶パネルで、画面ムラ多いことは仕方が無いですね。
応答速度
個人的には問題ないと思っています。AMAを切った状態で使用していますが、スクロールや動画で応答速度が遅いと思ったことはないです。
階調間によっては問題が出ているのかもしれませんが、知覚することは難しいと思います。
表示遅延
残念ながら測定できる環境がないので、TFT CENTRALが測定したデータを引用すると「8.3ms」の遅延時間です。約0.5フレームです。かなりの低遅延です。
ドット表示方法
ドット表示というよりは、このパネルの駆動方法によるものです。技術的な部分はここでは割愛します(知りたければ裏レビューをご覧下さい)。
視野角特性を改善するために副画素制御が行なわれています。このため中間調表示時に、ドットが半分になります。
私は表示していてあまり気になることはありませんが、人によっては気になるかもしれません。
画質設定
私はsRGBに準拠した表示が好きなので、色温度6500K、輝度80cd/m2(40cd/m2に設定することもあり)、ガンマ2.2に設定します。
キャリブレータがあるので、モニターの設定をいじくりまわさなくてもソフトが勝手に設定してくれるのですが、本体の色設定でも上記の設定に近づけることは可能です。
設定1 | 設定2 | 設定3 | |
---|---|---|---|
画像モード | ユーザー | ユーザー | ユーザー |
輝度 | 0 | 0 | 38 |
コントラスト | 44 | 44 | 10 |
色温度 | R:100,G:99,B:98 | R:100,G:99,B:98 | R:100,G:99,B:98 |
ガンマ | 2 | 1 | 2 |
設定1はコントラスト比が高い状態になります。色温度は約6500K、輝度は84cd/m2、ガンマは2.2にはならず、2.3程度になります。コントラスト比は3,000:1程度です。
設定2は、設定のガンマ2.1程度にしているだけです。
設定3は、コントラスト比(計測値;約1,500:1)を犠牲にし、ガンマを2.2、色温度を約6500K、輝度を80cd/m2にしています。
色温度は、上記のRGBの設定で6500Kになるので、後は輝度、コントラスト、ガンマを自由に設定しても良いかもしれません。
なお、液晶パネルの個体差があるため、上記のような設定に必ずしもなるとは限りませんが、おおよその数値にはなると思います。
その他
- 端子は、ミニD-Sub15ピン、DVI-D、HDMI、音声端子入力(ステレオミニ)、ヘッドフォン端子(ステレオミニ)。
- 端子接続は下から挿すタイプです。(画像)
- 画面サイズが27型のため、精細感はあまりありません。
- スピーカーは、ほとんどのモニターに言える事ですが、おまけ程度です。
- フリッカは感じることはありません。
- 本体の強度はあまり無いです。チルト角を変更する際にちょっと怖いです。
技術的なことがメインな裏レビューも同時に別館にて投稿しています。
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