TN方式/STN方式 - ディスプレイ解説

TN方式/STN方式

TN方式/STN方式について。

更新:2013年11月10日(日)
初掲載:2013年9月1日14時23分15秒

TN方式【Twisted Nematic】

TN方式[1]は、基板に対して垂直(縦)の電界で液晶をスイッチングする方式です。1971年にHelfrich氏、Schadt氏もしくはFergason氏により提唱されました[2]。1972年にアメリカのGruenが腕時計の表示板に使用したのが、初製品化です。日本では1973年に諏訪精工舎[3]が腕時計で用いています。なお、この当時のTN方式含めた液晶製品の“初”ですが、製品としての体を成していないものがあったりして、かなり曖昧です。

TN方式は、現在ある液晶パネルの基本方式です。

基本構造

アレイ基板[4]と対向基板[5]に透明電極を、液晶層を挟み込むように形成します。
偏光板[6]は、ノーマリ・ホワイト[7]の場合、2枚のガラス基板の外側に偏光[8]方向が直角になるように配置します。ノーマリ・ブラック[9]の場合、同じ方向(平行)にします。

この方式の名前の由来である捩れた配向を行なうため配向膜[10]にラビング[11]を行いますが、アレイ基板と対向基板でラビング方向が直角になるようにします。ノーマリ・ホワイトの場合、低電圧印加時に捩れた配向になり、高電圧印加に垂直配向になります。

ノーマリ・ホワイトの場合、液晶パネルに入射した光は、アレイ基板に設置された偏光板を通過する際に偏光されます。低電圧印加時には、この偏光光が90度捩れている液晶層でさらに偏光され、対向基板に設置された偏光板の偏光向きと同じ偏光向きになるため、光は偏光板を通過して表示(白表示)が行なわれます。高電圧印加には、液晶分子の配向は垂直配向のため、液晶層での偏光がないため、対向基板に設置された偏光板を通過せず黒表示になります。

液晶には名前の由来でもあるネマチック液晶を使用し、誘電率異方性が正の液晶(ポジ型液晶:Np)を使用します。

ノーマリ・ブラック、ノーマリ・ホワイトのどちらでも選択可能ですが、ノーマリ・ホワイトの方が表示品質が良いため、こちらが選択されることが多いです。

特徴

捩れ配向

大きな特徴として、捩れた配向を取ることです。この捩れにより光を偏光させることにで、表示を可能にしています。

しかし、この捩れた配向のため視野角が狭くなります。この狭い視野角は、マルチドメイン化を行なうことで大きく改善できますが、製造が複雑になります。視野角補償フィルム[12]を用いて視野角を改善することができますが、捩れた状態で補償することになるため、補償できる範囲は限定的です。

高い製造性

製造が比較的簡単で、製造誤差が大きくても比較的良好な表示を行なうことができます。使用される材料が安価であることなどから、低価格で製造することが可能です。

低駆動電圧

駆動電圧が低いこと、光透過率が高いため、低消費電力です。これは開発当時の話であり、現在は他方式(VA方式[13]、IPS方式[14])に比べて突出した数値ではありませんが、比べればTN方式の方が低消費電力です。

応答時間

TN方式は応答時間が短いとされていますが、中間調での応答時間はかなり長く、各階調間でも応答時間の偏差が大きいです。現在ではオーバードライブ駆動[15]と液晶素材の改良により、短い応答時間が可能になっています。

派生方式

STN方式【Super Twisted Nematic】

パッシブマトリクス方式[16]のTN方式ではある問題がありました。走査線数を60本程度に増やすと表示が乱れるという現象です[17]

この走査線の限界を超えるため、電圧特性の立ち上がりを急峻する方法であるSTN方式[18]が開発されます。名前の通り、TN方式を“Super”にしています。TN方式での捩れは90度ですが、STN方式では270度捩じれています。この捩れを増やすと急峻な立ち上がりを得ることできるため、PM-TN方式での走査線の問題を解決することができます。

STN方式はイギリスのRSRE(Royal Signals and Radar Establishment)のWaters氏とRaynes氏により開発されました。初製造はスイスのBBC(Brown Bove-ri)のScheffer氏とNehring氏です[19]

このSTN方式では、偏光光が液晶層で楕円偏光に変わってしまうため、表示色が着色してしまいます。BBC社が製作したSTN方式の液晶パネルも青色/白色表示でした。

STN方式でカラー表示を行なうために、白色表示のみを実現する必要があります。この問題はシャープの船田氏らにより、STN方式の液晶パネル2枚を裏表で張り合わせることで着色を相殺して解決する方法が提案されます。これをDSTN(Double-STN)方式といいます。しかし、液晶パネルを2枚使用するため、コストアップや重量がアップするなど実用性での問題があります。

STN方式の色付け、DSTN方式の実用性の問題の解決は、セイコーエプソンの和田氏らにより、位相差板を用いることで色付きを低減するFSTN(Film-STN)方式が提案されます。DSTN方式で、色付きを相殺するために用いた液晶パネルの代わりに位相差板を用います。

後にFSTN方式は、2枚の位相差板で液晶パネルを挟み込むようにしたTSTN(Triple-STN)方式になっており、現在のSTN方式はこのTSTN方式を指す事が多いです。

注釈

  1. Twisted Nematic。捩れ配向、捩れたネマチック、捩れた平行配向(ホモジニアス配向)とも呼ばれます。
  2. ほとんど同時期に特許申請を行なっており、このことで特許紛争が起きました。どちらが先かは今となっては闇の中(関係者は存命ですが、どちらも先といっているので)です。
  3. 現在のセイコーエプソン。
  4. TFT(薄膜トランジスタ)が設置されている基板のこと。TFT側基板とも呼ばれます。
  5. カラーフィルターが設置されている基板、もしくはTFTが設置されている基板と対向している基板のこと。カラーフィルター側基板とも呼ばれます。
  6. 光の偏光(光の向き=光の振動)を一方向にする光学部材のこと。
  7. 低電圧印加時に白表示を行ない、高電圧印加時に黒表示を行なうこと。
  8. 光の向き(光の振動)のこと。
  9. 低電圧印加時に黒表示を行ない、高電圧印加時に白表示を行なうこと。
  10. 液晶を配向させるために設けられる膜のこと。
  11. 液晶分子が規則よく並ぶ(配向)ようにする処理のこと。ラビング布と呼ばれるもので、透明電極膜の上に形成した配向膜を一方向に擦ることで溝を作り、液晶分子を配向させます。
  12. 位相差板とも呼ばれます。光学的異方性を有する光学フィルムのことで、液晶層で変わった偏光特性を補償して、視野角特性を改善することができます。
  13. Vertical Alignment。液晶方式のひとつ。詳しくはこちら
  14. In-Plane Switching。液晶方式のひとつ。詳しくはこちら
  15. 中間調においての応答時間を改善するために、電圧印加を通常より多くする駆動方法のこと。詳しくはこちら
  16. Passive Matrix(PM)。各ドットもしくは画素にスイッチング素子がない駆動方式のこと。単純マトリクスとも呼ばれます。逆にスイッチング素子がある駆動方式をアクティブマトリクス方式といいます。
  17. この現象は日立製作所の川上氏により解明されていますが、世界的にはIBM社のAlt氏とPleshko氏が解明したと有名です。時期的には川上氏が早いです。
  18. Super Twisted Nematic。捩れは270度が多いですが180度もあります。
  19. RSREはSTN方式の液晶パネルを製作することができませんでした。後にBBC社が製作に成功しているため、このRSREとBBC社では特許争いが起きています。

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Tag:解説 液晶パネル TN方式 STN方式