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韓国海軍天安(チョナン)沈没事件合同調査結果報告書全訳 - 第2章 沈没原因の分析(その1)

更新
2013年05月25日(土)

韓国海軍天安(チョナン)沈没事件合同調査結果報告書全訳 - 第2章 沈没原因の分析(その1)

第1章 | 目次 | 第2章(その2)


第2章 沈没原因の分析

沈没原因は非爆発、外部爆発、内部爆発に分けて分析し、国際海事機構(International maritime organization)の分析を基準として、発生要因別の可能性を判断した。

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1.非爆発

1)座礁

座礁で艦艇が損傷を受ける場合、通常艦底部にCutting現象が発生する。特に天安のように艦首艦底部にソナードームがある艦艇が航海中に座礁する場合、通常ソナードームが先に損傷する。

(1)損傷指標

損傷 調査結果
船底部のCutting現象 なし
船体の縦方向のひっかき跡 なし
船底下部装備(ソナードーム、プロペラ)の損傷 なし
座礁と見ることができる損傷状態(塑性変形[2]による損傷) なし
水深および暗礁にともなう座礁の可能性 なし
兆候、警報、証言 なし

(2)目視検査

天安船体引き揚げ後の船底に対する調査の結果、座礁によって沈没したと推定するほどのカッティングがなかった。また、船底最下部に位置したソナードームおよびスクリューも座礁にともなう損傷がないと確認された(<画像2-1-1>、<画像2-1-2>参照)。逆に座礁では発生しにくい2種類の船体変形が破損部に現れた。

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<画像2-1-1>天安引き揚げ時のソナードーム

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<画像2-1-2>天安引き揚げ後プロペラ

ガスタービン室切断部前後部隔室の船底部外板には、補強材の間の外板パネルに激しい変形(Dishing)が発生した(<画像2-1-3>参照)。これは過度な圧力が広範囲に作用した結果で、座礁では発生せず、衝撃波とバブル効果作用の根拠と見なければならない。

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<画像2-1-3>船底外板パネルのDishing(変形)

中央部切断部船底外板構造で艦内部に大きく曲がる現象が発生した(<画像2-1-4>参照)。艦尾切断部は船底外板が主甲板の高さまで、艦首切断部も同じ程艦内部方向に変形した。

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<画像2-1-4>艦首と艦尾の切断部に対する3次元レーザースキャン

艦首切断部左舷側船底外板は、艦外部に原点を置いた球面の形状で損傷し、ガスタービン室船体の竜骨も球形の圧力を受けて弓形に変形した(<画像2-1-5>参照)。このような現象は座礁では発生しない。

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<画像2-1-5>ガスタービン室船底外板

一方、切断面破壊特性分析の結果、座礁した場合には縦強度[3]損失で発生する小成変形による破壊様相はなく、船体外板に瞬間的に大きい圧力が作用した結果と見られる外板厚さ方向のせん断破壊(Shear fracture)[4]と高速変形による脆性破壊(Brittle fracture)[5]が現れた(<画像2-1-6>参照)。

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<画像2-1-6>天安切断面破壊特性分析結果

また、右舷プロペラ変形分析の結果、座礁した場合にはプロペラ翼が破損、全体にキズ跡がなければならないがそういう損傷は無く、5枚のプロペラ翼が艦首方向に変形が発生した(<画像2-1-7>参照)。スウェーデン調査チームは、このような変形は座礁では発生せず、プロペラの急停止などにともなう慣性力によって発生すると分析した。

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<画像2-1-7>天安右舷プロペラ形状

(3)環境的条件

天安の図面上のきっ水は2.88mであり、船体に残っている海草類の跡で運用上のきっ水は平均3.1m以内と判断される。沈没地点の水深は47mであり、作戦当時の区域の最低水深は8.6mと確認され、天安が海底に接触する可能性はなかった。また、3月28日から5月8日まで海軍掃海艇(4隻)と韓国海洋研究院調査船(2隻)による事故海域精密探査の結果、該当海域には航海に影響を及ぼす海底障害物がないことを確認し、周辺の人工漁礁は水深17-34m海域に設置されているため艦艇と接触する可能性がなかった。このような事実は調査に参加したオーストラリアチームによって検証された(<画像2-1-8>参照)。

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<画像2-1-8>天安沈没海域の海底地形探査結果

(4)モデリングおよびシミュレーション

座礁の可能性がなかったのでモデリングおよびシミュレーションは実施しなかった。

(5)兆候および警報

天安沈没の座礁兆候および警報はなかった。

(6)関連人員証言

生存者陳述内容を分析した結果、座礁と判断するほどの証言はなかった。

(7)結論:可能性なし

座礁で発生する船底の損傷、裂ける現象が無く、船底部に設置されたソナードームおよびプロペラの損傷がなく、近隣海域に暗礁もないと確認された。また、非接触水中爆発で発生する船底外板のDishing現象が観察されて、暗礁または他の座礁原因による損傷の可能性は排除した。

2)衝突

一般的に船舶が航海中に衝突すれば、被衝突船の舷側外板が裂けて、衝突船が被衝突船内に進入することになれば破断部の形状は衝突船の船首部形状とほとんど同じになる。また、被衝突船には衝突船のペイントなど残留物が残ることになる。

(1)損傷指標

損傷 調査結果
衝突と判断できる損傷状態(衝突船の船首形状) なし
衝突船舶が被衝突船に残した接触跡および残留物 なし
事故当時、近隣海域で活動した船舶 なし
兆候、警報、証言 なし

(2)目視検査

天安舷側部の損傷には衝突船の船首形状だと見ることができる破損や残骸物がなかった。全体的な損傷は船体下部から大きい力が上方向に作用した形だった(<画像2-1-9>参照)。

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<画像2-1-9>天安切断面形状

(3)環境的条件

事件発生時刻を韓国海軍戦術資料処理システム(KNTDS)および船舶位置自動識別システム(AIS)で確認した結果、5.5マイル以内には航海中の船舶はなく、TOD上にも天安周辺に航海した船舶がないと確認され、衝突の可能性はなかった。

(4)モデリングおよびシミュレーション

衝突の可能性がないのでモデリングおよびシミュレーションは実施しなかった。

(5)兆候および警報

事件発生当時、衝突と関連した兆候および警報はなかった。

(6)関連人員証言

生存者および救助当時参加者らの証言に衝突と関連した内容はなく、救助当時撮影された映像にも衝突船舶は確認されなかった。

(7)結論:可能性なし

衝突船との衝突形状、接触跡および残留物、事件当時近隣海域で活動した船舶はなく、生存者証言にも衝突と確認できる内容はなかった。また、非接触水中爆発時に発生する船底破損と船底補強パネルに球形現象が観察されて、衝突による損傷の可能性は排除した。

3)疲労破壊

疲労破壊(Fatigue fracture)は、荷重が繰り返し作用する時、降伏応力(Yield stress:弾性変形が起きる限界応力)により低い応力[6]で破断が発生する現象で、亀裂が徐々に拡大してある一定以上の大きさになると破壊に発展する。亀裂は構造物の表面で始まり、この段階では艦艇構造全体が破壊される可能性は殆どない。

亀裂が始まった状態で反復荷重を受ければ亀裂は拡大して伝播する。一般的に急速に進行されないので、船体に対する定期検査等で確認されて保守される。このような亀裂は局部的な構造部材[7]を損傷させる段階に留まっていて、船舶全体が破断する大事故になる事例はきわめて珍しい。

疲労破壊による切断面には波形の跡(Beach mark)があり、破断面は綺麗に切断されて両側を合わせれば完璧に一致する。

(1)損傷指標

損傷 調査結果
船体構造の亀裂 なし
疲労破壊による損傷状態(切断面のBeach mark、全体的にきれいな切断面) なし
船体老朽化 軽微
兆候、警報、証言 なし

(2)目視検査

天安の切断面は、艦首船底面が全般的に上方向に曲がっており、左舷船底は形状を調べることができない程上甲板方向に変形しており(<画像2-1-10>参照)、艦尾の船底面は横隔壁の直ぐ前でなめらかに切り取られていた。

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<画像2-1-10>艦首、艦尾切断面形状

天安艦尾切断面破壊特性の分析の結果、破断時船底下部で上方向に作用した途方もない力によって隔壁隣接部で瞬間的なせん断破壊が発生し、船底全体にわたって莫大な塑性変形を伴った破壊が発生したのを確認した。また、ガスタービンが装着された剛性基礎と右舷の船側構造が完全に分離し、艦首船底部右側部分は引張力によって引き裂かれた(<画像2-1-6>参照)。

(3)環境的条件

天安は、艦引き渡し後22年間運用され、耐久年度(25年)に達しておらず、最近5年間(05-09年)の整備実績を確認した結果、14回(合計69週間)整備を実施した。上架整備は5回(合計9週間)船体塗装および船体状態検査(超音波検査)等で船体状態は良好だと確認された。特に、船体には疲労破壊の事前兆候であるクラック(Crack)等は発見されなかった。

また、船体引き揚げ後に船体の老朽度を確認するために実施した超音波検査(10.4.30)の結果は<表2-1-1>の通り船体平均腐食率は3.22%であり、制限腐食率20%を考慮すると設計条件を満たすに十分な厚さを持っているため、船体疲労による損傷の可能性はないと確認された。

区分 左舷船体厚さ(平均:mm) 右舷船体厚さ(平均:mm) 船体平均腐食率(%)
建造時 超音波測定 平均腐食率(%) 建造時 超音波測定 平均腐食率(%)
ディーゼル機関室 9 8.75 2.77 9 8.67 3.66 3.215
11 10.59 3.72 11 10.63 3.36 3.54
11 10.68 2.90 11 10.55 4.09 3.495
15 14.59 2.73 15 14.61 2.60 2.665
    3.03     3.42 3.22

<表2-1-1>船体超音波検査結果(2010.4.30)

(4)モデリングおよびシミュレーション

疲労破壊の可能性がないためモデリングおよびシミュレーションは実施しなかった。

(5)兆候および警報

疲労破壊と関連になる船体亀裂などの関連兆候および警報はなかった。

(6)関連人員証言

天安生存者の船体運営および維持関連の保守専任副士官に確認した結果、船体構造物に亀裂などはなかったことが確認され、その他生存者から疲労破壊と関連した証言はなかった。

(7)結論:可能性なし

天安は船体に亀裂現象、疲労破壊時の切断面で観察される波紋の跡(Beach mark)がなく、平均船体腐食率は3.22%で非常に良好な状態であった。また、疲労破壊と関連した兆候および証言もなかった。非接触水中爆発で発生する船体損傷状態と船底補強パネルの球形現象が観察されたため、疲労破壊による損傷の可能性は排除した。

2.内部爆発

1)弾薬庫爆発

天安は主に哨戒任務を行う艦艇で40mmおよび76mm艦砲、対艦用ハープーンミサイル、対潜水艦用爆雷など多様な爆発物を搭載している。

(1)損傷指標

損傷 調査結果
弾薬庫隔壁および上部甲板の飛散、損傷 なし
弾薬庫甲板および側面が外側方向に変形 なし
火災跡/煤 なし
破片による弾薬庫隔壁および上部甲板の穴および破片跡 なし
常備弾薬庫爆発による艦砲損傷 なし
弾薬庫内部損傷および積載された弾薬損傷 なし
ケガ人の熱による火傷患者および聴覚障害者多数発生 なし

(2)目視検査

TOD映像確認の結果、天安は真っ二つになった状態で沈没した。また、引き揚げした船体を確認した結果、船体中央部が切断されていた。

40mmおよび76mm弾薬庫が位置した艦尾と艦首を外部から確認したが弾薬庫部分の鉄板の変形も発見されず、弾薬庫内部には損傷跡、すなわち弾薬庫隔壁が外側方向に歪む、破片による破口および残存破片が存在しなかった。

また、引き揚げた船体で発見された弾薬箱は水圧によって多少歪んだ状態だったが、爆発した形跡はなかった。

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<画像2-2-1>天安切断形状

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<画像2-2-2>艦首および艦尾船底状態

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<画像2-2-3>引き揚げ後の弾薬庫、弾薬箱状態

(3)環境的条件

弾薬(その他弾薬除外)は、艦上にハープーン誘導弾、ミストラル誘導弾、魚雷、爆雷、小型爆雷、艦内に76mmおよび40mm砲弾が保存されている(<画像2-2-4>参照)。

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<画像2-2-4>天安の弾薬保存位置

(4)モデリングおよびシミュレーション

弾薬庫が爆発しなかったためモデリングおよびシミュレーションは実施しなかった。

(5)兆候および警報

事件発生前弾薬庫爆発と関連した兆候および警報はなかった。

(6)関連人員証言

生存者のほとんどは爆発音を1回聞き、その中の1人は衝撃音の後に爆発音を、1人は爆発音の後に悲鳴を聞いた。爆発の瞬間船体と乗務員の体は30-100cm浮かび上がり、生存者全員が火災が発生したのを見ておらず、火薬の臭いもなかったと述べた。

(7)結論:可能性なし

船体引き揚げ後に天安搭載弾薬を数えた結果、流失した弾薬は5.56mm弾薬、小型爆雷信管、R-BOC[8]だった。上部甲板に位置した弾薬は十分な安全性を考慮して搭載されているため自爆の可能性はなく、自爆しても局部的な被害を与えるが船体破壊は不可能だ。艦内船底部分に位置した艦砲弾は船体を破壊することができるが、艦首または艦尾に保存されているため船体中央を切断する可能性はない。

また、船底部および弾薬庫に爆発跡がなく、引き揚げされた弾薬を数えた結果76mmおよび40mm砲弾は全て回収されたため、弾薬庫爆発は発生しなかった。

2)燃料タンク爆発

(1)損傷指標

損傷 調査結果
燃料タンク隔壁/甲板の分離 なし
燃料タンクの側面外板の変形 なし
燃料蒸気による火災発生跡や煤 なし
燃料パイプの破壊 なし
爆発による燃料タンク材質状態の劣化 なし
船体外板が外側方向に変形 なし
艦首および艦尾燃料タンクの損傷 なし

(2)目視検査

船体損傷部と燃料タンクの位置が一致せず、天安に現れた現象は燃料タンク爆発時の現象に一致しなかった。また、船体引き揚げ後に燃料タンクを調査した結果、ディーゼルエンジン室の後にある燃料タンクとガスタービン室の前にある燃料タンクが破損していないことを確認し、燃料は海水に混ざっている状態で完全に残っていて、燃料タンク側面および船底外部船体には損傷がなかった。すなわち燃料タンク爆発跡は発見されなかった。

(3)環境的条件

<画像2-2-5>は天安の燃料タンク。すべての燃料タンクに対する調査結果、何の損傷も発見されず、残燃料が保存され、爆発または火災の兆候はなかった。

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<画像2-2-5>天安の燃料タンク位置

(4)モデリングおよびシミュレーション

燃料タンクの爆発は発生しなかったためモデリングおよびシミュレーションは実施しなかった。

(5)兆候および警報

事件発生前ニ燃料タンク爆発と関連した兆候および警報はなかった。

(6)関連人員証言

沈没が燃料タンク爆発によったことを後押しするほどの証言はなかった。

(7)結論:可能性なし

乗務員らの証言が多少不明だという点を考慮しても、燃料タンク爆発時の現象の火災や火柱を見たという人員はいなかった。

天安引き揚げ後の調査の結果、火災にともなう煤煙跡や燃料タンクが爆発した跡はなく、艦尾タンクは完全な状態であり、艦首タンク2個が上方向に変形したのを除いては船体構造の変形がなかったため、燃料タンクの爆発がなかったと判断した。

燃料タンクを調査した結果、艦首タンク2個は損傷がなく、ガスタービン室近くのタンク2個はガスタービン室の爆発でタンク隔壁が上方向に変形した状態で、艦尾タンク3個は完全な状態であった。結論的に天安沈没は燃料タンク爆発ではないと確認した。

3)ディーゼルエンジンの欠陥

天安にはMTU 12V 956 TB 82ディーゼルエンジン2基が左右推進軸と連結され、航海中には2基のエンジンを同時に使用する。

(1)損傷指標

損傷 調査結果
ディーゼルエンジン室隔壁の飛散または分離 なし
喫水線の上のディーゼルエンジン室の側面外板の外側方向への変形 なし
火災発生跡、煤 なし
爆発時の破砕現象による破口 なし
ディーゼルエンジン室の損傷 なし
船体外板の外側方向への変形 なし

(2)目視検査

ディーゼルエンジン室の前方隔壁は船尾方向に損傷を受け、ギアボックスとシャフトが右舷上方向に曲がっており、右舷シャフトが左舷シャフトより更に曲がっていた。ディーゼルエンジン2基とも内部爆発による損傷は発見されず、損傷は比較的少なかった。

(3)環境的条件

1.ディーゼルエンジンの位置

ディーゼルエンジンは主甲板を基準とすると艦尾部中央船底に位置している(<画像2-2-6>参照)。

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<画像2-2-6>天安のディーゼルエンジン室位置

2.ディーゼルエンジン爆発の可能性および確認事項

現在までに調査分析した一般事項と天安整備および運用関連書類、生存者証言、引き揚げ船体確認結果は<表2-1-1>の通りだ。

区分 確認事項 確認結果
関連書類
  • 運行記録(寿命周期など)
  • 装備運用間に発生した特異事項
  • 周期的な計画整備履行実態
装備寿命は過ぎたが正常な整備で運用上問題なし
生存者証言 爆発音
  • エンジンの騒音過多発生
非聴取
  • 金属性破裂音および内部衝撃音発生
非聴取
  • 機関室および機関操縦室火災警報機作動
非作動
船体引き揚げ時状態 エンジン
  • エンジンシリンダーなど燃焼部の破損
  • ゲージパネル上各種ゲージ(圧力、温度)破損
破損なし、爆発跡なし
機関室
  • エンジン室内部に燃料油、潤滑油などの漏出
  • エンジン爆発による近隣補助装備の破損
  • エンジンの周囲火災の発生、煤
  • エンジン固定台ボルト緩み、破損
エンジン室の耐火材などに煤はなく、エンジンは正常に固定されている
機関室隔壁
  • 舷側隔壁の引っかき跡、部分的破口
  • 機関室天井および左右舵隔壁に煤
エンジン室隔壁の引っかき跡、破口なし

<表2-2-1>エンジン爆発の可能性確認結果

爆発前の天安ディーゼルエンジンの状態を確認するために海軍装備整備情報システム上の整備および運用記録を確認した結果、天安のディーゼルエンジンは1988年に導入された装備で、耐久年数(2008年)は超過したが、正常な軍および外注整備を実施した。事件当時の最終運行時間は<表2-2-2>の通り整備時期に到達していない状態であった。

区分 運用年度 整備実績 整備後運転時間
W-5整備 W-6整備 W-5整備 W-6整備
No.1 D/E 1988.12.29 2007.4.30
2009.5.13
2008.2.22 2,288 5,434
No.2 D/E 1988.12.29 2007.4.30
2009.5.13
2008.2.22 2,288 5,434
整備周期
  • 耐久年:20年
  • W-5整備(軍整備):運転3,000時間
  • W-6整備(外注整備):運転9,000時間

<表2-2-2>ディーゼルエンジン運用年度および計画整備履行実態

海軍装備整備情報システムに保存された3年間(2007-2009)の整備内訳を調査した結果は<表2-3-3>の通りだ(細部内訳は海軍装備整備情報システムで照会可能)。

年度 整備内訳
2007年 シリンダーヘッド検査、修理など28件
2008年 循環ポンプモーター修理など15件
2009年 急速空気遮断装置修理など50件

<表2-2-3>最近3年間のディーゼルエンジン整備内訳

また、ディーゼルエンジンの技術的特性を把握するためにディーゼルエンジン関連国家機関および製造会社、そして海軍のエンジン専門家と技術教範などの技術資料により確認した結果、ディーゼルエンジンは特性上爆発する可能性が低く、爆発してもエンジン構成品の破損に限定されて、機関室内部空間(約10m×10m)により船体が破損(切断)する可能性はないと確認された。ディーゼルエンジンが爆発する場合は火災が発生するが機関室内火災感知器、警報機、遠隔消火装置などによって直ちに消化可能のため、火災が爆発と関連する可能性は極めて低く、船体引き揚げ後の調査により火災が発生した跡はなかった。

エンジン過負荷による爆発の可能性は、エンジン過負荷が発生すると燃料および燃焼空気供給ラインの自動遮断、自動排出装置作動などの安全装置により火災が発生する可能性は低い。

事件当時のエンジン状態確認のために生存者証言を聴取した結果、事件当時天安は速力6.7ktsの低速で航海中だったためエンジンが過熱したり欠陥が発生せず、エンジン室爆発時に発生する火災もなく、エンジン爆発時に発生する爆発音もなかった。

(4)モデリングおよびシミュレーション

ディーゼルエンジンの爆発は発生しなかったためモデリングおよびシミュレーションは実施しなかった。

(5)兆候および警報

事件発生前にディーゼルエンジン爆発と関連した兆候および警報はなかった。

(6)関連人員証言

沈没がディーゼルエンジン爆発によるものとする関連人員の証言はなかった。

(7)結論:可能性なし

天安ディーゼルエンジンは耐久年数が経過したが、正常な整備(W-5及びW-6)で運行上の問題点は見つからなかった。ディーゼルエンジンは爆発する可能性が低く、過負荷時は構成品の破損による破片の飛散はあるがエンジン室内部に限定されるため爆発に繋がらない。特に事件当時の天安は低速だったためエンジン過負荷の危険性はなく、沈没事件とディーゼルエンジン爆発は関係がないと判断した。

4)ガスタービンの欠陥

天安はLM-2500ガスタービンが1基装備され、主に高速航海時に使用される。

(1)損傷指標

損傷 調査結果
ガスタービン室隔壁の飛散または分離 あり
喫水線の上のガスタービン室の側面外板の外側方向への変形 あり
火災発生跡、煤 なし
爆発時の破砕現象による破口 なし
ガスタービン室の損傷 あり
船体外板の外側方向への変形 なし

(2)目視検査

右舷隔壁および上甲板が爆発によってガスタービン室を基準として外側方向に吹き飛ばされ、船体内側方向に変形が起きた。火災跡や煤、破口などは発見されなかった。

(3)環境的条件

1.ガスタービンの位置

ガスタービンの位置は主甲板を基準で中央後尾側ディーゼルエンジン室直ぐ前に位置して(<画像2-2-7>参照)、ガスタービンと推進軸、そしてスクリューとの連係状態を図面化すれば<画像2-2-8>の通りだ。

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<画像2-2-7>天安のガスタービン室位置

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<画像2-2-8>天安のガスタービンとディーゼルエンジンおよび推進軸位置

2.ガスタービンの爆発現象および確認事項

ガスタービンとは圧縮機で、高圧で圧縮された吸入空気と噴射されたディーゼル燃料ガスを燃焼室で燃焼させた後、ガス発生器で排気ガスを生成して、パワータービンを回転させることによって推進動力を発生させる装置で、火災は発生するが爆発する可能性は低く、耐火力に優れた壁で保護されていて、火災が広がる可能性はきわめて低いと判断された。ガスタービンの損傷原因と現象を導き出せば<表2-2-4>の通りだ。

損傷 現象
  • ガスタービン構成品材質不良
    -ガスタービンHSFCSと減速ギア連結部の損傷
  • ガスタービンの主な構成品破損
  • 保護隔室内火災発生

<表2-2-4>天安ガスタービン損傷原因および現象

ガスタービンの爆発(損傷)時は、ガスタービン主要構成品は破損するが、保護隔室内に位置しているため船体破損などの2次被害で広がる可能性は非常に低い。また、保護隔室内で火災が発生しても警報および遠隔消火装置が作動して、直ちに鎮火することが出来る。

天安のガスタービン爆発の可能性に対し整備および運用関連書類、生存者証言、引き揚げ船体の調査の結果は<表2-2-5>の通りだ。

区分 確認事項 確認結果
関連書類確認
  • 運行記録(寿命周期など)
  • 装備運用間に発生した特異事項
  • 周期的計画整備履行実態
耐久年限は過ぎたが定期整備などで運用に異常なし
生存者証言
  • ガスタービン出力音過多発生
  • 金属性破裂音および内部衝撃音発生
非聴取
船体引き揚げ時状態確認 ガスタービン
  • ガスタービン燃焼室、圧縮機、タービンの破損[9]
引き揚げの結果、一部損傷
  • ガスタービン保護隔室破損および火災煤煙現象の発生
艦首側流失、艦尾側異常なし
  • ガスタービン連結装備(減速ギア)物理的損傷の発生
一部損傷
  • ガスタービン室および機関操縦室火災警報機の作動
非作動
  • 燃焼室など主な構成品の破損
引き揚げの結果、破損なし
保護隔室
  • 保護隔室隔壁火災煤煙現象発生
  • ガスタービン固定台ボルト緩み、破損
流失後引き揚げ

<表2-2-5>ガスタービンによる爆発の有無確認結果

沈没前の天安のガスタービンの状態を確認するために海軍装備整備情報システム上の整備および運用記録を確認した結果、天安のガスタービンエンジンは88年から運用され耐久年数20年は経過したが、最終運用時間は5,213時間で、約25%の運航状態で整備上の問題点は発見されなかった。最近3年間の整備実績は<表2-2-6>の通りだ。

年度 整備内訳
2007年 タービンフレーム、動力タービン翼および変流器検査など17件
2008年 振動感知器回路検査など15件
2009年 固定可変翼操作系統検査、修理など36件

<表2-2-6>最近3年間(2007-2009年)整備内訳

ガスタービンの技術的特性を把握するためにエンジン関連国家機関および製造会社、海軍エンジン専門家と技術教範などの技術資料で確認した結果、軽油を燃料として使用する艦艇ガスタービンは爆発の可能性が低く、火災の可能性はあるが、ガスタービン自体が機関室内特殊保護隔室で保護されていて、火災が燃焼室外部に広がる可能性はない。また、ガスタービン保護隔室内には火災感知器、警報機および遠隔消火装置が設置されていて、火災が発生しても直ちに自動消化が可能で、自動制御システムによって停止するため火災による爆発の可能性はない。

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<画像2-2-9>ガスタービン保護隔室

特に天安艦尾および艦首引き揚げ後の目視調査の結果、ガスタービン室は流失した状態だったが、その後構成品が引き揚げられ、ディーゼルエンジン室との隔壁にエンジン破損などによる破口跡(ガスタービン破損時にタービン翼などの飛散で周囲隔壁などに破口が発生する)は発見されず、沈没直前まで録画されたCCTV映像で火災発生の兆候は見られなかった。そして天安生存者および各種状況日誌を確認した結果、事件当時天安は6.7ktsの低速運航中であり、ガスタービンは使用されていない状態であった。

(4)モデリングおよびシミュレーション

ガスタービン室の爆発が発生しなかったためモデリングおよびシミュレーションは実施しなかった。

(5)兆候および警報

事件発生前にガスタービン爆発と関連した兆候および警報はなかった。

(6)関連人員証言

沈没がガスタービンの爆発によることを後押しするほどの関連人員の証言はなかった。

(7)結論:可能性なし

天安のガスタービンは耐久年数が経過したが、分解整備などで良好な状態を維持し、ガスタービンの特性上爆発の可能性が低く、火災発生の可能性はあるが安全装置が強化されていて、火災が発生しても船体の切断まで拡大する可能性はないと確認された。特に、当時ガスタービンは稼動していない状態で、天安沈没と関連がないと判断した。

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<画像2-2-10>ガスタービン室とディーゼルエンジン室間の隔壁状態

cheonan2_22.jpg

<画像2-2-11>事件発生直前のガスタービン室の姿(CCTV映像)


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